第1章『一生に一度は』

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「その後は、先ほど僕がお伝えした通り、境内に猿が出たというニュースと、神社に呼ばれたことに動揺して、返却という形を取られたのではないかと……。 あの手紙の文章は、簡単ではありましたが、学生ではなく大人が書かれたものだということが伝わってきましたしね」 ホームズさんは、大きく息をつき、顔を上げた。 「と、まぁ、これが、『もしこの中に釘を抜いた犯人がいたとしたら』という妄想の仮定です。 失礼いたしました」 ホームズさんは、まるで自分の作った物語を話して聞かせ、それが終わったような、とても清々しい笑みを見せる。 当の細川さんは、小刻みに震えていた。 「違っていたんだったら、『ちげーよ、このクソガキ!』って言ってもいいっすよ、細川さん。この男は名前出してないけど、明らかにあなたのこと言ってたし」 秋人さんは、ホームズさんの頭をつかむ。 細川さんは何かを言おうとして口を開きかけ、すぐにギュっと閉じて、俯いた。 「……大変、申し訳、ございませんでした。わ、私……」 震えながら、口を開く細川さんに、ホームズさんは、すっくと立ち上がり、扉を開ける。 「――井川さん、皆さん、僕たちは出ましょう」 私たちは頷いて、神主の児島さんと細川さんを残して、部屋を出た。
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