第1章

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「言い伝えによると孔雀はさ――サタンの使いだったって」 「ウソだ。聞いたことないね」 「いいや。キリスト教の七つの大罪は?」 「知ってるさ。傲慢・貪欲・淫欲・憤怒・大食・嫉妬・怠惰――だろ?」 「ああ。だから、華やかすぎるこの羽は傲慢の象徴なんだって」 誰も聞いてやしないのに。 響也は後ろから僕の肩を抱くと 内緒話をするみたいに声を潜めて囁いた。 「孔雀もいい迷惑だよ。生まれつきの羽のせいでそんなこと言われたら」 僕が鼻で笑ってそう言うと。 「いいや。むしろ人間を嘲笑ってるさ。悪魔の使いだとは知らず、綺麗だ綺麗だってこの羽を愛でる間抜けな人間たちを」
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