第1章

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響也はしかつめらしい顔をして僕の肩に頭を持たせかけた。 「――汐里の匂いする」 そのまま――甘えるように鼻先を摺り寄せる。 「やめろよ。まだシャワーに入ってないの」 「別にいいさ。水疱瘡で3日入らなかった日も知ってる」 いつものことだった。 僕ら兄弟は昔から本当にものすごく仲が良かった。 片時も離れずにいても疲れなかったし。 互いにとって互いの空気が心地のいいものだった。 「愛してるよ、汐里」 それに響也はことごとく口に出してそう言った。 「――知ってる」 てらいもなく答える僕もごく自然と兄の愛を受け入れていた。
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