かすみとおぼろ

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――ふぅん……。 じゃあ、『きり』も『もや』もおなじものなの? 「そんな事、どこで聞いたんだ」 咎(とが)めるような声とともに、障子の奥の部屋から、青年が現れた。 手にした丸盆に、桜の葉でくるまれた薄紅のつぶつぶとした団子と湯飲みが、乗せられている。 桜餅だ。 ――うわぁ、いいなぁ。 「お前ら、いらねぇだろが」 溜め息を漏らした童が、えぇー、と露骨に眉をハの字に曲げる。 ――ずるいー! わたしたち、ちゃんとるすばんしてたんだよ。 ――やめなよ、かすみちゃん。 このひと、さくらもちをかいにいくためだけに、わたしたちをよびだしたんだよ。 足をばたつかせての抗議をもう一方の童が遮り、 「なんかトゲのある言い方だな」 青年が眉尻を動かした。
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