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エンジンの音が近付き、家の前で自動車が停止した。
向かいに住む一家が帰宅したのだ。
「今日はいいお花見日和だったなぁ」
「今日はまた、一段ともやがすごかったね。日が暮れたのに、まだけむってる」
「やだぁ。ピーエムなんとかって、大丈夫かしら」
「母さんってば、そればっか」
ひとが降車する音、荷物を運ぶ音がどやどやと続き、
それが合図であったかのように。
ふたりの姿が、青年の前から消え失せた。
ひらり、はらり、と。
人の形に切られた二枚の形代(かたしろ)が、青年の目の前で舞い落ちた。
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