黄色いタイルと私の思惑

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「ねえ、ちょっと気になったんだけど。父さん、このゲーム……みたいな部屋、解いてほしかったのかな」 「あたりまえ」 「そう?」 「げーむ、くりあしてほしくて、つくる」 「そういうものかー」  私はどうやら性格的なところで、父のすることに興味が持てないようだ。  絵は、からかわれたことで描かないものとして決めつけたから、例外としてもいい。  でも。  本はできれば読みたくない。辞典を取りに来たけど、本音を言えば授業中でも使いたくない。  ゲームは、やったことがない。体を動かすことが好きだから休み時間とか外で遊んでたし、部屋でおとなしく遊ぶだなんて考えたこともなかった。  私が興味を持てなかったことが、父さんを構成するなにかとして広がっている。 「私、父さんのこと、何も知らなかったんだな」 「いまから、しれば、いい」 「それは理屈だよ」  父さんが実在しない以上、何を言っても想像にしかならない。死人に口なしってやつだ。  とはいえ今はそこを悔やんでる場合じゃない。私が知らずに過ごしてきたゲームというモノについて考える必要があった。 「ゲームって言葉は確定として、あとは何をくっつけるかよね」  残り少ない文字パネルを広げて、前や後ろにくっつく文字がないか考えてみる。  うげーむ。  せげーむ。  とげーむ。  みげーむ。  めげーむ。  ぺげーむ。 「ぺげーむとか面白いんだけど。アフリカのお菓子だとか言われたら信じちゃうよ」  バカな事を呟いてひとりで笑ってたら床にぶつかり、衝撃で文字パネルが落ちてしまった。  手を伸ばしたけど間に合わず、足元をうろちょろしてたタイルにぶつかって。  タイルに弾かれて、そのパネルは、偶然にも文字列の後ろにくっついた。  そして、ぶるりと大きく震えた。 「えっ」  それしか声が出なかった。  足元に、片手でつかめそうなサイズのおもちゃが現れたからだ。  切り抜きと照らし合わせれば、画質は悪いが、同じものだろうと察せる形をしている。 「偶然……?」  そう呼ぶにはできすぎだが、タイルに聞いてもはぐらかされるだけだろう。 「さて、あとひとつ、かな」  あくまで偶然ということにして、現れた『げーむき』を机に置く。  ずっと持ってたら、凝視したら、タイルを問い詰めたくなりそうだから、なるべく素早く手放したかった。
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