消しゴム

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「先生、プリントを集めてきました」 「はーい、ありがとう」 職員室に入った私を、担任の先生が笑顔で迎える。 そしてプリントを受けとると、数を確認し、ホッとしたような笑顔を浮かべた。 「…うん、みんなの分あるわね。ありがとう、速水さん」 「……いいえ」 担任にほほ笑みながら、内心ではこっそりほくそ笑む。 …クラス担任は若い女の先生で、反抗心が強くなってきた男子生徒たちに少しなめられていた。 学級崩壊などとはほど遠かったが、授業や、ホームルーム、提出物回収のとき、上手くまとめられずに戸惑う担任の姿を時おり見かける。 そんなとき、担任をフォローするのは私。 それとなく男子をかわして、担任の仕事を手助けする。 一歩間違えればいじめのターゲットになりそうな危うい行為ではあるものの、していること自体は間違っていないためか、クラスメイトには仕切り屋のいい子ぶりと敬遠されるだけに留まっている。 そして、担任からは確かな信頼。 それがとても心地よい。 …中学受験に向けて、教師からの覚えはめでたいに越したことはないし。 学校生活は上手くいっている。 幼く、狭い狭い世界に生きていた私は、自分の世界をコントロール出来ていると思っていた。
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