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(……だけど、どうしたものか)
自分の消しゴムまで盗られてしまった以上、この件を流してしまうのは出来そうにない。
なんとか解決し、担任の信用も消しゴムも手に入れたい。
でも、浪江くんに真っ正面から『消しゴム盗っただろう、返してくれ』なんて言って、上手くいくとは到底思えなかった。
(うーん……)
出来れば穏便に、そしてスムーズに終わらせたい。
考えろ。私ならきっと出来るはず。
だって
今まで上手くやってきたんだもん。
……でもいい考えが出来ないままチャイムがなり、算数の授業が始まった。
「……はーい、では今日はー…」
担任が授業を進行するも、どこかざわついている教室。
一部の男子が集中せず、ふざけておしゃべりをしているからだ。
「……みんなー、ちゃーんと聞いてください。今から大切なところを教えますよー」
担任はひきつった顔で注意するが、男子は全く意に介さない。
それどころかクスクス笑い声をたてる始末だ。
「……だってさー、せんせー? おれの分度器ないんだもーん。盗まれちゃってさー」
「それは…
代わりのものを渡したでしょう?」
「でも使うの怖いじゃん。また盗まれるかもよー。犯人捕まってないしー」
男子はそう言って、浪江くんの方を見た。
視線に気づいた彼は『あ?』と低い声でつぶやくと、机をガタンと蹴りあげる。
「……っ」
ことなかれ主義の担任がビクッと身をすくませ、教室が緊張感に包まれた。
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