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「…てめえ、何が言いてえんだよ…」
浪江くんの不機嫌さを隠そうとしない声。
低くうなるようなそれも、人を射殺すような視線も、周りの同級生とは比べものにならない迫力だった。
実際、ほとんどのクラスメイトは彼から目をそらし、関わらないようにしているのがわかる。
からかった張本人の男子さえ、身体が引けているくらいだ。
「…言いたいことがあんならハッキリ言えよ。回りくどいことしてんじゃねえ…!」
ガタン……!と一際大きな音をたて、浪江くんが席を立つ。
平均身長を優に超す長身の彼は、立ち上がるだけでかなり迫力があった。
「な、浪江くん…! じゅ、授業中ですよ、座りなさい!」
担任が震える声で注意するものの、そんなもの聞く彼ではない。
「…うっせえ…! 先にごちゃごちゃ言ってきたのは、こいつらだろ」
教師すらも一喝し、からかった男子たちを指差して睨み付ける。
…噂以上の短気っぷりだ。
(もっとも、5年生が始まって1ヶ月ちょっとだけれど、ここまでキレたのは初めてではある)
でも……
これはチャンスかもしれない。
恐くないと言えば嘘になるけれど、浪江くんに言うなら今だ。
「………静かにしなさいよ。授業中よ」
私は精一杯の落ち着いた声でそう言って、浪江くんを見上げた。
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