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「……呪われろ」
ぼそっ…とそんな言葉がこぼれ落ちた。
目の前には空っぽの傘立て。
背後の窓からはザーザーと雨の音が聞こえてくる。
――――放課後。
担任から頼まれた雑用をこなして、さあ帰ろうかというとき。
空からは大粒の雨が降り注いでいた。
今日の天気予報は、曇りのち雨。
その通り、午後から雨が降りだした。
きちんと天気予報では傘の用意をすすめていたので、私を含めて傘を用意していたクラスメイトは多かったはずだ。
だけど、朝は降っていなかったため、数人はうっかりしている者もいただろう。
そして、どうやらそんなうっかり者に、傘を持っていかれてしまったみたいだ。
「…………マジか」
ザーザー響く雨の音。
この中を突っ切るのはごめんだ。
でも、担任に用事を頼まれて下校が遅くなってしまったのでクラスメイトは誰も残っていない。
傘に入れてくれと頼むのも無理だった。
…まあ、気軽にそんなことを頼める相手もいないけれど。
(……どうしようか)
お母さんは仕事だから迎えは頼めない。
職員室で相談してみようか。予備の傘くらいはあるだろうし。
でも、傘を取られて助けてくれる友達もいないと先生に言うのは少し抵抗がある。
何となく……恥ずかしい。
「うーん……」
せめて小雨にならないかと祈りながら、取り敢えず昇降口までおりていく。
しかし、昇降口から見た空もやはりどしゃ降りだった。
(……傘持って行ったやつ、呪われねーかなー)
ため息つきながら、正体もわからぬ犯人に呪詛を送ってやる。
…犯人、これこそまさか浪江くんだったりするんじゃないだろうか。
なんて妄想推理していると
「―――おい」
「……!」
いきなり、後ろから声をかけられた。
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