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郵便受けに入っていたのは、一通の封筒。
薄い水色の縦長のそれは、かつて見たことがあるものだった。
「……げ」
思わずそんな声がもれる。
封筒を取り出した指先がかすかに震えているのがわかった。
宛名を見ると『速水仁奈 様』
確かに私の名前。
そして差出人は、『聖リリィ女子学園中等部』――かつて私が通っていた学校だった。
(…いまさら、何?)
この学校にいたのは約2年。
中退とも言える転校をし、きちんと卒業することすら叶わなかった。
そんな母校とも呼べない母校から、一体なんの便りなのだろうか。
…部屋に舞い戻り、震えて覚束無い手で封を切る。
予想外なことに、水色の中にもう一通封筒が入っていた。
その封筒に添えられていたのは教師が書いたと思われる簡素なメモ。
『速水 仁奈さん
ご健勝のこととお喜び申し上げます。
先日、あなたのかつてのご学友――――さんより、ぜひにと手紙を預かりました。
同封いたしますので、どうぞお受け取りくださいね。
あなたに主のご加護がありますことを』
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