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「………ご学友って……」
書かれていた『ご学友』の名前を見ても、一瞬誰だかわからなかった。
何度か頭の中で反芻し、ぼんやりと姿が浮かんでくる程度。
……確か空手部のエースでショートカットの女の子。
いわゆる、女子校で女の子にキャーキャー言われるタイプの子……だったと思う。
ちなみにちっとも仲良くなかった。
そもそもあの学校で、私に友人らしい友人など居なかったように思う。
まして転校してからは、あのときの繋がりを両親がすべて断ちきってしまったのだ。
「……それなのに、何の手紙なんだろう」
皆目見当がつかない。
そして、特に興味もわかない。
あの学校での思い出に、ろくなものなんてなかったし。
でも、まあ、無視するわけにもいかないか。
私は大きなため息をひとつついて。
私の名前しか書いていない封筒を開いた。
「………え」
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