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「……な、んで」
心臓がどくどくと激しい音をたてる。
足が震えて上手く立てず、私はベッドに座り込んだ。
手紙の内容―――
大して仲良くもなかった同級生からのものとしては、異常だし、違和感がある。
でも、私がショックを受けたのはそこじゃない。
『ニーナ』
その、呼び方。
私の名前は仁奈だ。
親も、高校でのあまり親しいとは言えない友人たちもそう呼ぶ。
というか、中学のときは名字の速水以外で呼ばれたことなんてない。
なのに、どうしてこの子が私をニーナと呼ぶの?
どうしてその名前を知っているの?
その呼び方をしていたのは、知っているのは……
2人だけ、だった。
「…………っ、」
何となく、そんな気がしていた。
何か起こるんじゃないかって。
昔と出会うような。
忘れないといけないことが動き出すような。
そんな何かが起こるんじゃないかって。
久しぶりに『あいつ』の名前を思い出したから。
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