1滴目 Vampire's Legend

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  〇〇〇  ピピピッ ピピピッ ピピピッ ……  ピンクのスマホが無機質で電子的なアラーム音を奏でた。  紅璃は手探りでベットの上からスマホを探しだし音を止め、起き上がって重い瞼の上から目を擦る。  課題のせいであまり眠れなかった……  寝ぼけ眼でリビングに出ると、紅璃の分の朝食が用意してあった。朝食は目玉焼きとレタスとハム、それとミニトマト。何かのキャラの柄が入った大きな皿に乗っていた。コップには牛乳が並々注がれている。キッチンには誰もいないし、他の部屋に人がいる気配もない。学校やら仕事やら何やらで家族みんな出かけているようだ。  母親はすぐ帰ってくる予定なのだろう。テレビはつきっぱなしだった。 『……も引き続き捜査していく方針です。……えー、続いてのニュースです。大阪県△中市〇〇区××で死体遺棄事件です。先日未明、マンションのごみ捨て場に放置されていたのは58歳男性。死後2年経過しており、辺りにはひどい腐敗臭が漂っておりました。警察は早急に遺体の身元を調べるとともに死因解明に当たっており、また死体を遺棄した人物を当たっているということです。続きまして、一昨日の夕方6時ごろに、兵庫県〇崎市××、△△マンションの地下駐車場で女性の惨殺死体が発見されました。被害者は一糸まとわぬ姿で倒れ、その上に凄まじい量の……』  テレビはニュース番組を流しており、そこでは誠実そうなアナウンサーが低く通る声で悲惨なニュースばかりを読んでいた。今日も日本は不景気そうだ。  紅璃は慣れた手つきでトースターで食パンを焼くと皿を取り出し、それにマーガリンを塗り置いた。大皿の横に並べ、急ぎめに朝食を食べる。紅璃の今日受ける講義は2限目からなのでまだ余裕はあったが、その前に真紀と待ち合わせがあったのでそこまでゆっくりする時間はなかった。  食べ終わると皿や箸をキッチンの水につける。自分の部屋に戻り適当に私服を選んで着ると、気持ち程度の化粧をした。  脇のボストンバックを持つと玄関で赤と黒を基準としたお気に入りスニーカーを履いて家を出る。慌て気味に扉の鍵を閉めていると、三つ隣の部屋に住む顔見知りのメガネの男子大学生がちょうど自宅に戻るところだった。鍵を閉め終わってから軽く挨拶をし、紅璃はマンションの階段を駆け下りていった。
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