レンタル桜

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「よっ、よし。開けるぞ!」  ドアを開けるだけで、なんで緊張しているの?  そんな疑問は、ドアが開くと同時に消え去ってしまった。  柔らかな匂いを感じ、春風と共に桜の花びらが舞い踊る。  悪びれる様子も無く、家の中へと侵入した花びらは、くるりと舞って僕の頭に一つ、二つ、三つ……楽しそうに踊ってる。 「父ちゃん……これは?」  ドアの向こうには、父ちゃんの身長より少し小さい桜の木。  ……  ……  あれっ?  この桜……足が生えてるよ! 「はっ、花見をしたいって言ったろ? さあ行くぞ!」  異常な光景を前に、僕は不思議な感情に包まれていた。  懐かしい? そんな言葉が浮かび上がり、胸の奥が温かくなる。  顔が引きつっている父ちゃんと手を繋ぎ、動き出す桜の木を追いかけた。
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