24人が本棚に入れています
本棚に追加
「よっ、よし。開けるぞ!」
ドアを開けるだけで、なんで緊張しているの?
そんな疑問は、ドアが開くと同時に消え去ってしまった。
柔らかな匂いを感じ、春風と共に桜の花びらが舞い踊る。
悪びれる様子も無く、家の中へと侵入した花びらは、くるりと舞って僕の頭に一つ、二つ、三つ……楽しそうに踊ってる。
「父ちゃん……これは?」
ドアの向こうには、父ちゃんの身長より少し小さい桜の木。
……
……
あれっ?
この桜……足が生えてるよ!
「はっ、花見をしたいって言ったろ? さあ行くぞ!」
異常な光景を前に、僕は不思議な感情に包まれていた。
懐かしい? そんな言葉が浮かび上がり、胸の奥が温かくなる。
顔が引きつっている父ちゃんと手を繋ぎ、動き出す桜の木を追いかけた。
最初のコメントを投稿しよう!