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「篠原さん?どうしたの、ぼーっとして。まだclose作業終わってないよ?」
「あ、すみません。ちょっと気が抜けちゃって」
先輩バーテンダーである橘は、少し心配そうな表情で此方を覗いた。
「今日は少し忙しかったからね、大丈夫?何か一杯作ってあげるよ」
そう言い、カウンターの中へ戻って行く。
柔らかい手つきで素早く準備を始めると、
シェーカーに次々と飲材を入れてゆく。
その仕草の一つ一つに品があり、
綺麗な手でシェーカーを振る姿は、かなり様になっている。
流れる様な動作に視線を奪われ、目が離せない。
端正な顔立ちと、柔らかい口調、年齢は26と若いが
それは1人の完成されたバーテンダーの様に思える。
スッと差し出されたカクテルグラスには、白い乳白色の液体が満たされて
バックバーの明かりで砕けた氷のかけらがキラッと光った。
「はい、お待たせ。……ホワイトレディでございます。」
口に含むとジンが舌を刺激し、レモンの香りが鼻から抜けて、ぼーっとしていた頭が少しスッキリとした。
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