55人が本棚に入れています
本棚に追加
「…じいちゃんと一緒に暮らそうな」
マドルスは跪き、目線をリアンに合わせて言った。
「…うん」
リアンはジャンが言った言葉が、嘘だと分かっていた。
自分の為に付いてくれた、優しい嘘だという事も。
しかし、自分が出ていけば、結婚もでき、縛られることなく自由に暮らせると思ったのだ。
「…いつから一緒に暮らすの?」
それが一週間後なのか、一ヶ月後なのかは分からないが、出来るだけ先にして欲しいと願いながら、リアンは聞いた。
「…今日、じいちゃんと一緒に帰ろうな」
予想だにしない答えに、悲しみながらも、リアンはただ一言、「うん」と答えるしかなかった。
二人はリアンの荷物をまとめに酒場へと向かった。
酒場では、エルラの好きだったウィスキーを昔の常連客達が飲んで盛り上がっている。
「リアンおかえり」
昔の常連客達が声を掛けてきた。
「…うん、ただいま」
リアンは悲しみを悟られないように、作り笑顔で答えると、そのまま二階に上がり、荷物をまとめだした。
最初のコメントを投稿しよう!