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ジャンはマドルス・ソーヤという名前を知っていた。
そして記憶に残る、昔見た雑誌に写っていたマドルス・ソーヤと、目の前にいるマドルスの顔が一致した。
「…世界的に有名なピアニストですよね?」
「…ただのピアニストです」
そう謙遜したマドルスの顔は、より悲しみに染まっている。
「…息子の子供…孫の名前を教えてくれませんか?」
「…リアンと言います」
「…リアン」
マドルスはリアンの名を呟きながら、堪えていた涙を流した。
「…私はずっと息子を探していました…そしてやっと出会えることができたんです…今日、息子達の墓に行ってきたんです」
マドルスは誰かから聞いた、フェルド達夫婦が眠る墓を参った帰り道に、ここにきたのである。
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