55人が本棚に入れています
本棚に追加
汽車を丸一日乗り継ぐと、マドルスの住む家がある、駅へと着いた。
マドルスは途中立ち寄った駅で電話を掛け、リアンの転校の手続きをしてくれている。
汽車の中で、口数は少なかったものの、二人はいろんな話しをした。
「リアン、ピアノは好きか?」
「リアンのお母さんはどんな人だったんだ?」
殆どの会話の主導権はマドルスだったが、リアンもジャンを思い出しているのだろう、涙が流れるのを耐えながら話していたのだ。
汽車を降りると、二人は改札を抜けた。
そして駅を出るとそこには、黒い光沢のある高級車が停まっていた。
車の前には、パリッと皺一つない黒のスーツと、黒のハット、それに白い手袋を嵌めている男が立っている。
格好からしてこの男は、この車の運転手のようだ。
運転手は駅から出て来たマドルスに気付くと、頭を下げ、後部座席のドアを開け、再び頭を下げた。
マドルスはリアンを開かれたドアの奥へと導くと、自分もその横に座り、荷物を仕舞い、乗り込んできた運転手に合図を出した。
そして車はマドルス邸目指して発車した。
最初のコメントを投稿しよう!