第1章

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いつもの数倍の時間をかけて朝食をなんとかたべ終わり、力加減の練習をする。 しかし、ありとあらゆる物が粘土のように柔らかく感じまともに持つこともままならない。 練習用に持ってきた鉄製のスプーンは、既に鉄製のサムシングに変貌してしまっている。 羽毛を触るように、もっと柔らかく...ああ。 スプーンだったものの原型がまた崩れていく。 一時間ほどかけてスプーンだったものをなんとか持つことができるようになった頃、インターホンの音が聞こえた。 多分、ニレだろう。 楡祐介。僕が中学の時に引っ越してきて、それからずっとバカをやっている。 「ゴリー!大丈夫かー!」 そういや今日は、いや今日も。 彼と遊ぶ約束をしていた。 携帯が壊れたから連絡も出来ないし、そもそもそれどころではなかった。 この姿を万が一見られたら...まあ大丈夫だろ、あいつだし。
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