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「ふぇ~、怖かった……」  化け物を倒して気持ちが緩んだら、急に痛みが走った。視線を向けると、いつの間にか肘から血が流れている。 「ありゃりゃ、転んだ時かなぁ、全然気づかなかった……」  とりあえず僕は剣を鞘に戻し、怪我した肘を押さえたまま、その場を離れることにした。湧き水でも探して、傷を洗いたい気分だ。 「ちょっとあんた、それ置いてくつもり?」  声がしたので振り返ると、岩陰から長い髪の女の子が現れる。  沢山のアクセサリーをジャラジャラと身に着けて、大きなショルダーバッグを肩に引っ掛けている。ちょっと目つきが鋭いけど、かなりの美少女だ。  僕は突然現れた女の子に驚いて、何も言えずに立ち尽くす。  女の子はサソリの尻尾を拾い上げて、「これって高く売れるでしょ、何で置いてくのよ」と責めるように言い立てた。 「それって売れるんだ、知らなかったよ」 「知らないって、あんた暗黒の森まで何しに来たわけ?」 「いや、自分でもよく分からないんだけど……」  女の子は怪しむような表情で僕を眺めつつ、「ステータス」とつぶやいた。 「レベル1? あんたそのレベルでよくここまでこれたわね、戦士とは言え無茶すぎ!」 「えっ何? 僕のレベルとか分かるの?」 「さっきから変なことばかり言ってる。あんた何者なの?」 「いやっ、何だろう、戦士、なのかな?」 「あんたが戦士なのは分かってるのよ、ステータスを見たんだから。何をしにここに来たのかってことよ」そう言いながら女の子はバッグを開き、中から草を取り出した。  そしてそれをクシャクシャと揉んでから、僕の傷に擦り込む。 「おろろっ、一瞬で血が止まった……」 「まさか薬草すら知らないとか言わないでしょうね?」 「これ薬草なんだ、凄い良く効くね」 「この世界に、この薬草を知らない人間なんているわけないでしょ。あんた本当に何者なの?」 「いやぁ、君こそ何者なのよ? こんな森の中に一人でさ……」 「あたしはヒルダ。森の盗賊よ」  女の子はそう言って、鋭い目つきで僕を見つめた。
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