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「贅沢を抜かすな。あとはわしの思い付きで決める。スポーツ万能で天才、おまけに金持ちなんて人生は、何度か経験すればすぐに飽きてしまって耐えられんのじゃ!」
「でも僕は、それを一回も経験してないんですけど……」
「経験するのはわしじゃ、お主は役者だとわきまえよ。しかしアドリブは大いに結構。せいぜい面白い物語を紡ぎだしておくれ」
うむむむむ、なんだかえらいことになったぞ。ついさっきまで普通の高校生だったのに、いきなり白い世界の専属役者になってしまった。
だけど正直ちょっと面白そうな気もする、同じようなことを繰り返す毎日には退屈してたんだ。でも退屈だからって死にたかったわけじゃないし、僕が死んだら両親は悲しむだろうから、やっぱり元の生活に戻りたいって気持ちの方が強いかな……
あれ? 穴に吸い込まれた後で、声さんの思い付きで新しい状況が始まるってことは、場合によっては元の生活に戻ることも可能なんじゃないか?
「あの~、もしかしたら穴に吸い込まれた後で、元の高校生という状況に戻ることも可能だったりします?」
「実を言うと不可能ではない。しかしお主の高校生活はつまらんから駄目じゃな」
「いやいやいや、待ってください。まだ僕のアドリブ能力が本領を発揮してないだけですよ」
「僕はまだ本気だしてないだけ、か?」
「そうですそうです、もう一度チャンスをください」
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