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「おわっ、何これ!」
それは大型犬ぐらいのサイズで、サソリみたいな姿をした化け物だった。そして僕に考える隙を与えることなく、両手のハサミを前に突き出しながら、ガサガサとこちらに突進してくる。
「ちょっ……」思わず後ずさりした僕は、木の根元につまずいて、そのまま尻餅をつく。
僕の視線はサソリと同じ高さになった。
感情の読み取れない瞳を持った、赤い化け物がこちらに迫ってくる。
「うぎゃぁああ」なんて叫びつつも、サソリが射程圏内に入った時点で、顔面に向かって蹴りを入れてみた。するとサソリは、素早く上半身をのけ反らせて蹴りをよける。
こいつ意外と俊敏だ。
そして次の瞬間、僕の両足はサソリの両手に挟まれて、凄い力で押し込まれた。まるで赤ん坊のオムツ交換みたいな恰好になってしまい、かなり屈辱的で恥ずかしい気分だ。
さらにサソリは尻尾をしならせて、先端の針をこちらに突き出してくる。
僕は身を守りたい一心で、右手に握っていた剣を振り切った。
ジュバッという音と共に、赤い尻尾が宙を舞う。
そして僕は剣を持ちかえて、サソリの首と胴体をつなぐ隙間を突き刺した。
化け物は息絶える。
森に静けさが戻るが、僕の心臓はバクバクしたままで呼吸も荒い。
なんとか立ち上がって、剣でサソリをひっくり返してみる。まったく動かないので完全に死んだようだ。
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