秘密の芽吹き

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秘密 16 テツ乃イヱにて、        よく見れば所々夏の名残の疲れたような芝生の色。 それを眺めながら、コウタから続きの言葉を待っていた。 微かな子どもの声と、バタンとドアの閉まる音。 廊下を歩く足音が聞こえ、それに気づいたコウタがダイニングテーブルから立ち上がる。 「 コウタ 」 テツという人の声がドア越しに聞こえてきた。 「 どうした?空か?」 「 うん、ちょっと見てやって」 「 わかった。 杏果ちゃん、 ちょっとまってて 」 と言いながらうなずいた杏果にウインクを一つすると、 コウタはテツと共に家の奥へ消えた。 その後ろ姿を見送る。 そしてまた、 「 ベルギー、 レース  」 頭の中で杏果は反芻する。 母さんの桜、 そして、その桜の両親には会ったこともない杏果だった。 ヒロシと響子と暮らす家ではお互いの親類の事は出ない、 出さない空気で、 あの家にいる時には、気にならなかった? 気にしないように?していたんだ。 だけど響子のお母さんは知っている。 そして、響子のお母さんの再婚相手には流星って連れ子がいた。 おぼろげだが、昔その再婚相手の男性、流星の父にも会った記憶はある。 もしかしたら…… 響子がヒロシが言わないことまで知っているのかもしれない。 響子に聞いてみようか? 昨晩、ヒロシを訪ねてきた “かしもと“と名乗ったヒロシの叔父だという紳士。 俺は本当に何にも知らない。 母の桜のことを思い出すことも多いけど、二人にはそういう話はした事はなかった。 なんで、出会ったんだろう…… 確か割井さんと母が知り合いだったとは聞いていた。 割井さんが高校の時、その高校に来ていた実習生がヒロシさんだとすると、 母はヒロシさんをそんな昔から知っていた? 俺の父親って……? 鬱屈する気持ちが込み上げてくる。 今までなんで! 大きく深呼吸して、 溢れそうな苛立ちを杏果は強引に抑えこんだ。 まだ夏の余韻を残す暑い日差しの中、 その暑さに耐えた木々の葉を揺らしていた風が凪いでいた。 日が高くなるのに併せて、 ジリジリと焼けるような芝生、 ねっとりと絡みつくような濡れた土の匂いが窓越しでも感じる。 誰かが朝に水を撒いたんだろうか。 ふっと、頭の中には病院の中のやけに消毒のきつい匂いを思い出す。 かしもと。 …… いつだったか、 どこかで聞いた覚えがあるんだけど。 あーーーーーーー! 頭ん中ぐちゃぐちゃになってる…… テーブルに肘をつき、両手で頭を掻き毟る。 さっきのコウタさんの質問。 血が止まりにくい? それって、聞いたことある、なんかのテレビのドラマで、 確か病気の名前…… ふっとポケットに入れっぱなしだったスマフォを出すと、 そのドラマのタイトルをググってみた。 えっと、 あ、これだ。 血友病? その次は血友病で検索してみると、 物凄い量の検索結果が流れてくる。 ちょっと待って! まだコウタさんのあの質問だけだから。 そうだ、まだ何もわかってない。 一旦目についた検索項目を2、3個タップして、自分宛のメールに送付した。 この先、どうしたら? その時、持っていたスマホに着信があった。 響子からだった。 続く ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ミニコメを頂いてとても嬉しい理由に、 一つは頭の中を整理できることがあります。 自分の書き殴りを一歩も二歩も離れて見るのはなかなか難しいですが、 ミニコメを読みながら、 気づくこと多し! 大変ありがたいのです。 お返しするコメントうざかったらすみません😂 くうぅ、この焦らすような展開にワクワクドキドキ🎵 → 一回に1000字前後は長いようで短いです。 500字で回して行ったほうが読みやすいかな、とか色々迷います(^^;; 繋がる繋がる一本の糸。シリアスな展開にドキドキ。かたや王国は……(≧∀≦) → 数話毎にシーンが変わるのは読みにくいかなぁ、とか思いつつ💦 謎解きみたいでワクワクしてきたー → そう、思って頂けていたらとても嬉しいです😆 レース編みに何か秘密が…? → なんと! 探偵か!コナンか⁉️w🙀
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