殺害予告

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殺害予告

朝、目覚まし時計が煩くて目が覚めた。 前日彼女と別れた後、どんな道程で帰ったのか記憶が曖昧な程に僕は酒に呑まれていたらしい。 テーブルの上には自分で用意したらしき水と、彼女から届いた手紙が並べられていた。 君に殺されたい。 彼女の声を思い出す。 昔と変わらない綺麗な黒髪の奥では、怪しく瞳が爛々と輝いていた。 きっと、彼女は本気で言っていたに違いない。 しかしどうすることも出来ないじゃないか、と僕は頭を振ってベッドから体を起こした。 通勤中の電車内では、二日酔いの為か頭痛がガンガンと響いていた。 座ったまま目を閉じて眉を寄せる。 その時、少し離れた所でどよめきがあった。騒ぎを聞いていると痴漢が捕まったようだ。なにやら勇敢な人が居て、服の中をまさぐられている少女を救ったらしい。 ……僕にはそんな勇気はない。痴漢から少女を救う勇気も、彼女を殺してしまう勇気も。 恐らく捕まった男のものであろう怒鳴り声を耳にしながら再び瞼を閉じた。あぁ、頭が痛い。 きっとそんな勇気の無い僕を、世間が知ったら咎めただろう。弱虫だと罵られただろうか。この世は偽善で溢れて居るのだから。 君はそんな僕を咎めるか? あぁ、話を戻そうか。     
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