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僕は勿論無事に会社には辿り着いたのだが、この日は散々だったのを覚えている。
仕事でミスをして上司にはこっ酷く絞られ、コーヒーはせっかく作った資料の上に零してしまった。この日は取った契約を後にキャンセルされた日でもあったはずだ。
「城崎さん…ですよね、大丈夫ですか?顔色が優れませんけれど……」
昼休み、一人でコンビニ弁当と向き合っていた時だった。
クリクリと丸まった天然パーマの女性が隣に立っていた。肩に届くか届かないかの所で生意気に多方向へ散らばる毛先は、何とも可愛らしい印象を受けた。
「あー…っと、すみません……」
僕は微妙な顔をしながら返事を返した。
彼女は慌てたように名札を見せてきた。
「あっこちらこそすみません、お話したこと無いですものね…今年新卒で入ったんです、横峯と申します、よろしくお願いします。」
「いや、人の名前をちゃんと覚えていない僕が悪いから…横峯さん、こちらこそよろしくお願いします。えっ…と、体調は大丈夫、ただの二日酔いだから。」
「あら、昨日は相当飲まれたんですか?ふふ、想像出来ませんね。会社だとお仕事一本って感じがしますし。」
横峯さんはクスクスと小さく笑った。
星野さんのような大人っぽい女性とは違って、小動物のような女性だった。
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