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彼女はまるで、荒野の中に咲く花のようだった。
まるで、ガラクタに埋もれた宝石のようだった。
まるで、ゴミ山に舞い降りる天使のようだった。
僕は高校2年生に上がる春、初めて彼女を目にした。子供ながらに、なんて美しい人が存在するのだろうと思ったものだ。
名前は聞いていたし、これでもか、というほど騒がれていた。でも見に行こうという気力は湧かなかった、興味も無かった。
だから同じ教室でこれから一年を過ごそうという時に、初めて衝撃を受けたのだ。
彼女は誰よりも制服が似合い、真っ直ぐに伸びた黒髪は誰よりも綺麗だった。
しかし、僕は彼女に声をかけられるような人間では無かった。
学校という場所は、学生にとって絶対的な存在であり、ほぼどこでも当たり前のようにカースト制が存在する。
目立てば目立つだけ優位な立場に立てる、そうして初めて彼女のようなマドンナに話をかけることが出来る。そんな暗黙のルールだ。誰もが通る道である。
僕は、そんなカースト制のかなり下位の方にいたのだ。
無論、教室の隅で1人、本を読んでいるような生徒だったからである。
しかし僕にとっての学校生活は彼女中心ではなく、友達と居る時間を何より大事にしていた為に満足したのを覚えている。
我ながら色恋沙汰にはクールな子供だったようだ。
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