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これだけ人に好かれていても、そんな事が気になるのだろうか。それとも、好かれるが故に気になるのだろうか。
何ヶ月か目にしていた彼女を表す言葉なら、いくらでも頭の中に浮かんだ。
綺麗だ。人気者だ。皆の憧れの的だ。
しかし、僕の口から出たのは " さみしそう " であった。何故自分がそう言ったのかは、自分でもわからない。しかし、正直な気持ちだったのは確かだ。
彼女はいつも人に囲まれ、褒められ、いつも笑顔を振りまいているが、ふと寂しそうな顔をすることがあった。別段彼女をずっと目で追っていたわけではない。
それなのに僕は気付いていたのだから、他にも気付いている人は多数居そうなものであるが、彼女はキョトンとしていた。
そうしてまた、眩しい笑顔を見せた。
「そんなこと言われたの初めて。……そうか、城崎くんにはそう見えてるのか……。」
ふぅん、と声を漏らすと少し難しそうな顔をしていた。僕はまた彼女から目を逸らして、宙に舞う埃に目を向けていた。
昼休みになると彼女が図書室に顔を出すようになったのは、その日からだった。
彼女は僕が思っていたよりも気さくで、大雑把で、よく笑う人だった。
3年生に上がる頃には、僕も彼女の顔を見て話せるようになっていた。
その間に恋心が無かったかと問われれば嘘になるが、友人として話せるあの時間が、僕にとってとても心地の良いものであった。
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