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「城崎くん、私と付き合ってみない?」
趣味や好きな食べ物、学校内での立場ににこそ差はあったものの、不思議と会話が絶えることの無い間柄に依存しそうになっていた高校3年生の春。
彼女のその一言で、僕の募りに募った恋心は溢れ出してしまった。たったその一言で、僕達は彼氏と彼女の関係となったのだ。
だからといって今までと大して変わることはなく、一緒に居る時間は増えたものの、恋人らしい時間はそこまでなかった。
唯一あった既成事実は、1度手を繋いだ事くらいだろうか。
それでも僕は満足していた。彼女の隣に居られるだけで充分で、これ以上関係を進めていこうとも思わなかった。好意があるからこそ、普通は2人で色々な経験を積みたいと思うものだろうが、この時の僕は違った。
中学生の頃は好きな子で、様々な妄想をしていたというのに。自分でも不思議だった。
何故彼女にはそのような欲がなかったのか、今でもうまく説明は出来ないのだが、好きだったからこそ無かった、としか言いようがない。
ただ一緒に勉強して、食事をして、話をするだけで幸せだった。
当然最初は、周りから疑いの目を向けられた。仲の良い友人には、夢でも見たのかと笑われた。
僕も彼女に釣り合わない自分に恥を感じ、彼女が皆に二人の仲を公表したことを恨んだ。
しかし、彼女は僕をそんな風には思っていないようだった。
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