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彼女も同じように僕の話をしてくれた。
僕は思っていたよりも、つまらない人間だったそうだ。
当然褒め言葉には聞こえなかったのだが、彼女は何だか嬉しそうだった。
卒業まで残り半年といった頃だった。
「私ね、卒業したら上京するんだ。都内の大学に行くの、格好良いでしょ。」
進路の話をしていた時だった。
悲しいとも嬉しいともつかない、複雑な感情だった。格好良いとは思わなかった、それは確かである。
僕はただ頷くだけだった。
「でも、そしたら遠距離恋愛になっちゃうでしょ?」
「僕が東京に行かないって、どうして分かるの」
「……んー、どうしてかな。私ね、何故だか君の事がよく分かるの。」
気に食わない答えだったが、彼女の予想は大正解だった。
特に理由は無いが、僕は地元に残り、地元ではかなり良い方の大学に入るつもりだった。
「でも私、遠距離恋愛は嫌なの。君の事は好きよ。それに、君は浮気なんてしないだろうし、他の女の子に下心を持つ事も、まぁ無いんじゃないかと思うの、凄く信用はしてる。…でも、遠くに行ってしまった恋人を想うだけの恋愛だなんて、つまらないじゃない?」
僕は、"うん"とも"ううん"ともつかない返事をした。彼女が自分にとって、こんなにも生活の一部になるとは思っていなかった。
正直な気持ちをいえば、彼女と別れたいとは思わなかった。
しかし、こんな彼女が好きであったし、彼女の主張や考えを曲げることはしたくなかった。
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