Feast(最後の祝宴)- 開幕

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ドアが内側から開けられると会場の風景が一望できた。 「うわっ・・・男臭っ!」 強面の男たちが正装をして犇めき合っている。 そして壇上に一際目立つ二人の黒紋付の男が二人、こちらに注目していた。 「相変わらず似合ってるな」 背中まで届く金色の美しい髪を後ろで束ねた艶っぽい男と、凛々しくまっすぐな目でこちらを見据える青年・・・・今日も格好いい。 壇上までの通路はスポットライトで照らされて明るい場所まで続いている。 「洋次、行くぞ」 「はい」 雪駄をつけた足を一歩、また一歩と進める。周りの強面たちは、ライトが当たっていないので全く見えない。ここでもし銃を構えられたら見えない。 「大丈夫です。私が必ずあなたの盾になります」 「死ぬなよ」 通路から舞台に上がるまで、長い時間に思えた。多くの好奇な視線と、死の危険もひしひしと感じている。どこかで自分を、桂斗を狙っている輩がいるかもしれない。掌にじんわりと汗が滲む。 司会者が高らかに自分の名を読み上げるのが聞こえた。その声はまるで他人事のように脳には届かず横を素通りする。 自分の中には、自らの心の声だけが反響していたからだ。 「改めとご紹介いたします。雷門組・若頭 雷門理玖さまです」 舞台の中央に進み出ると、スポットライトが煌煌と自分を照らす。招待客は300人程度だと聞いているが、暗くて見えない。うっすらと蠢いているのはなんとなくわかる。まるで地底を履い回る魑魅魍魎のようだ。 「本日は、私ごときのためにお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。わたくし雷門理玖は雷門組・四代目、雷門桂斗の命を受け、若頭就任ということに相成りました。以後とも、よろしくお見知りおきください」 深々と頭を下げる。ここまでは一連の儀式・・・シミュレーション通りの所作だ。 「まずは乾杯となります。お手元の枡をお取りください」 司会者が手に桝を持って掲げる。 ここはグラスじゃないんだな・・・・日本酒を飲むんだ・・・心の中で驚く。 会長が前に進み出て、理玖の肩をポンとたたいて交代した。スタッフから枡酒を渡される。 「本日は、我が愚息のためにお集まりいただき、ありがとうございます。これから関東・龍仁会は、ますます勢力を拡大していく所存です。雷門組も兄弟が力を合わせて龍仁会のため邁進してくれることでしょう」 ちらりと此方を見やるとニヤリと含み笑いを浮かべた。
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