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「兄弟は明日、結婚披露の宴を催すことになっています。公私ともにパートナーというわけです。これから雷門の絆も強固なものになるでしょう。二人の息子が結ばれるというのは、親としては多少驚きですが、私自身のことを考えるとそう文句も言えないので・・・・まぁ皆様もそのようにお考えを・・・・では乾杯!」
『乾杯!』
会場からも声が上がり、皆枡を口に当てる。一息もつかずにすべて飲み干すことが習いだ。
「しばし、ご歓談を・・・」
飲み終えたところで司会者が声をかける。しんとしていた会場がざわざわと騒ぎ出した。
理玖はすっと兄の隣にすり寄る。
「これ、どういうこと?」
「言われた通り動けばいい」
「最後に上裸になればいいの」
「背中を見せればいい」
「俺って囮?」
「・・・その仔細は会長の胸中だ」
「また”俎板の鯉”か。篠崎隆弘は来てるの?」
「来てるはずがないだろう。すでに足を洗っている」
「やっぱ会ったんだ」
「お前が会えと言っただろ?」
「まぁね・・・・で?まだ兄ちゃんのこと好きとか言ってた?」
「馬鹿。そんなこと言うわけないだろう」
「アイツは、今回絡んでないのか?」
「確かにアイツに話はあったようだが・・・・自分は雷門に恩もあるからと」
「兄ちゃんに・・・の間違いでしょ」
「とにかく昨日アメリカに帰った。空港まで見送ったし」
「へぇ・・・お見送りまで。熱心なことで」
「変に突っかかるな」
「嫉妬してるだけです」
「くだらない」
「どうせくだらない人間です」
頬を膨らませると、硬かった兄の表情が少し緩んだ。
「誰が首謀者かわかってるんでしょ?」
「たぶんな」
「組長は知らないの?」
「知らない」
「嘘だったら今夜大変だよ」
「なんだよ、それ」
「今日から三日抱き通しなんだってよ。俺の体力は底知れないからね。覚悟しておいて」
そういうと耳まで赤くして視線を逸らせる桂斗。
前にも同じ宴をしたことがあったのだから、容易に予想できるのだろうに・・・まったく可愛い反応をする。
「俺はアンタに会えなくて、かなり悶々としてるんだから」
「俺だって///」
うるうるした瞳で見られたら一気に欲情しちゃうじゃないか!可愛すぎる!!
「黙って”俎板の鯉”やりますよ」
「絶対、生きて帰る。いいな」
「もちろん」
こんな軽口をたたいている場合じゃないのはわかってる。
でも悲壮な貌をしている彼を見ていたくなかったのだ。
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