Feast(最後の祝宴)- 開幕

3/20
345人が本棚に入れています
本棚に追加
/128ページ
「兄弟は明日、結婚披露の宴を催すことになっています。公私ともにパートナーというわけです。これから雷門の絆も強固なものになるでしょう。二人の息子が結ばれるというのは、親としては多少驚きですが、私自身のことを考えるとそう文句も言えないので・・・・まぁ皆様もそのようにお考えを・・・・では乾杯!」 『乾杯!』 会場からも声が上がり、皆枡を口に当てる。一息もつかずにすべて飲み干すことが習いだ。 「しばし、ご歓談を・・・」 飲み終えたところで司会者が声をかける。しんとしていた会場がざわざわと騒ぎ出した。 理玖はすっと兄の隣にすり寄る。 「これ、どういうこと?」 「言われた通り動けばいい」 「最後に上裸になればいいの」 「背中を見せればいい」 「俺って囮?」 「・・・その仔細は会長の胸中だ」 「また”俎板の鯉”か。篠崎隆弘は来てるの?」 「来てるはずがないだろう。すでに足を洗っている」 「やっぱ会ったんだ」 「お前が会えと言っただろ?」 「まぁね・・・・で?まだ兄ちゃんのこと好きとか言ってた?」 「馬鹿。そんなこと言うわけないだろう」 「アイツは、今回絡んでないのか?」 「確かにアイツに話はあったようだが・・・・自分は雷門に恩もあるからと」 「兄ちゃんに・・・の間違いでしょ」 「とにかく昨日アメリカに帰った。空港まで見送ったし」 「へぇ・・・お見送りまで。熱心なことで」 「変に突っかかるな」 「嫉妬してるだけです」 「くだらない」 「どうせくだらない人間です」 頬を膨らませると、硬かった兄の表情が少し緩んだ。 「誰が首謀者かわかってるんでしょ?」 「たぶんな」 「組長は知らないの?」 「知らない」 「嘘だったら今夜大変だよ」 「なんだよ、それ」 「今日から三日抱き通しなんだってよ。俺の体力は底知れないからね。覚悟しておいて」 そういうと耳まで赤くして視線を逸らせる桂斗。 前にも同じ宴をしたことがあったのだから、容易に予想できるのだろうに・・・まったく可愛い反応をする。 「俺はアンタに会えなくて、かなり悶々としてるんだから」 「俺だって///」 うるうるした瞳で見られたら一気に欲情しちゃうじゃないか!可愛すぎる!! 「黙って”俎板の鯉”やりますよ」 「絶対、生きて帰る。いいな」 「もちろん」 こんな軽口をたたいている場合じゃないのはわかってる。 でも悲壮な貌をしている彼を見ていたくなかったのだ。
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!