351人が本棚に入れています
本棚に追加
背中の披露は宴の最後だ。それまでに何か事が起きて、この祝宴自体なくなるのかもしれない。
一度舞台から降りて会場は明るくなった。会長はいろいろな組長と会話を交わしどんどんと奥に行ってしまった。組長と理玖は一番舞台に近いテーブルでグラスを傾ける。
恭介や真一も遠目からこちらをうかがっているのが見える。
「何があってもこの三日間は通さなきゃならねぇ。どちらかが死んでもだ」
なにか心を読まれた気がする・・・タイムリーな呟きだった。
どちらかが殺される?それとも会長が・・・いっきに想像が膨らんだ。悪夢しか浮かんでこない。
「コトさん来てるね」
「当たり前だ。アイツは組長だし」
「若手組長の会でも兄ちゃんとコトさんと二本柱って言われてるよね」
「そんなこと何処で聞いた」
「若頭会で小耳にはさんだ」
「へぇ、そんな会もあったんだな」
「もう顔出してるよ」
「代替わりしたばかりの組の若頭とか、新参の組の若頭が集まってるんだ。結構龍仁会の執行部にも不満を持ってるやつらが多いんだよね」
「・・・・・なるほどね」
「前、兄ちゃんに色目使ったジィさんいたじゃない?」
「ああ、佐々木のジィさんね。オヤジがぶっ殺したけど」
「あのジィさんが会長を狙ってたでしょ。その情報を仕入れたんだろうね・・・会長がその計画を逆手にとって若頭会を利用したわけ」
「どうゆうことだ?」
組長は持っていたワイングラスをテーブルに置いてぐいとこちらに歩み寄る。
「執行部の方針を誘導してるのは佐々木のジジィだって俺を使って吹き込ませたわけよ」
「それで会長に情報がばんばん入って・・・あのああ立ち回りになったわけね」
「あの時は焦ったよ、兄ちゃんが浚われて・・・会長に思うように動かされて」
「・・・・・あの事は忘れろ」
「金井を、赤龍の 神代恭弥を殺れたから?スッキリしたの?」
「スッキリなどしない。ただ思い返したくもない」
「俺もはらわたが煮えくり返る・・・・ムカつく」
「雷門虎太郎は今日もいろいろ仕掛けてあるんだろうね」
「ああ、明日には持ち込めないからな。今日で決着をつける」
「うん」
二人は握り拳を作って目の高さでかつんと合わせた。
男同志、極道同志分かち合えるものがある。
これは最初の大掃除だ。
理玖は組長の目を見つめた後こくりと頷いた。これからはこの人と二人三脚でこの世界を渡っていく。
最初のコメントを投稿しよう!