宴のあとには

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「うっ・・・・・ん・・・・・」 ピッピッ・・・・ 電子音が部屋に響いている。 躰が動かない。 うっすら目を開けると真っ白な天井が見える。横の大きな窓から燦々と日の光が差し込んで、東京らしい少し灰色ががかった空が見えた。 規則的な電子音が自分の鼓動だと知った。でも・・・ここは何処だろう。 「あれ?」 手に暖かみを感じて、恐る恐る動かしてみた。 すると手に触れていた何かがぴくんと跳ねるのがわかった。 「理玖?」 手のぬくもりは彼の手だった。ずっと握ってくれていたようだ。 「兄ちゃん・・・・俺・・・・」 「よかった・・・・・気が付いたか」 「どうしたの?ここ何処?」 「病院だ。お前の肩の傷、大事な動脈の下を貫通してて大量出血して・・・ほんとに危なかったんだぞ」 「生きてたんだ・・・・意識なくなったから死んだと思った」 「バカ、俺を置いて逝くきだったのか」 「自然に体が動いちまったんだ。自分が盾になっても、生きる方法を考えなきゃいけないって大友に口酸っぱく言われてたのに・・・・」 「もう・・・・・俺を守るな・・・・」 「守るよ。ただ・・・・俺がまだ自分を守る方法がわかってなかった」 「お前を失ったら・・・・俺は・・・・」 手に頬を擦りつけて絞り出すように桂斗が呟く。 「本当にダメだなぁ、俺・・・・。俺も生きないと桂斗が悲しむもんね」 「ああ、一人じゃ生きていけない」 「ごめんね。心配させて」 「死ぬほど心配した・・・・死ぬほど。もし帰ってこなかったら死のうと思った」 「雷門組、放って?」 「もう恋人を失うのは嫌なんだ」 苦しそうな顔を見ていたら。胸をぐっと掴まれた気分がしてそれ以上は何も言えなくなった。やっと生きて帰ってきたのだからもっと明るい話題にしないと・・・。 「俺、何日寝てたの?」 「あれから一週間経ってる」 「だいぶ抱いてあげられなかったんだね。あんなにきれいな格好していたのに」 「バカ・・・・今そんなこと言ってる場合じゃねぇだろ」 「だって・・・・惜しかったなと思って」 「全く・・・お前ときたら・・・」 真っ赤な顔をしてデコピンされた。こういう仕草がすごくかわいいという事をこの人はわかっているのだろうか。 「女装が好きなのか?」 「あははは・・・・痛っ・・・そうじゃないって」 動いたら肩に差し込むような痛みがあったが、かわいくって痛みのある肩に彼の躰を引き寄せた。
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