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「そんな格好で、寒くないのか?」
ジアは、ナヴァルの頭の先からつま先までをジロジロ見つめた。
着ているのはシャツとズボンだけだ。
「どこから来たんだ?」
ナヴァルは答えずに、ジアを見つめた。
「これを貸してあげるよ」
ジアはコートを脱ぐと、ナヴァルに差しだした。
「僕は、ジア。あの孤児院で働いているんだ。暖かくなったら返しに来て」
ナヴァルがそれを受け取ると、ジアは走って孤児院へ向かった。
ナヴァルはジアを見送ると、コートを羽織って笑った。
容易いのだ。
コートに呪いをかけて、返しに行こう。
あのオーラはすぐに手に入る。
ナヴァルはコートからジアの過去を読み取ろうとした。コートの記憶を辿るのだ。
だが、そのコートは何も教えてくれなかった。
何一つ。
もしかしたら今日手に入れたばかりなんだろうか…。いや、だが布はかなり傷んでいる。それに、そのコートには他の誰かの記憶すらなかった。
益々、ジアに興味を持った。
翌日、ナヴァルはコートを返す為に孤児院を訪れた。
勿論、呪いはかけておいた。ジアが桜の虜になるよう。
ジアは笑顔で迎えてくれた。
その上、ランチに誘ってくれたのだ。
パンと鶏肉のシチューだけだ。
久しぶりの人間の食事だ。
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