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俺は特にこれといった特技のない普遍的なサラリーマンである
と言うのも、高校、大学と偏差値で表すと50程度の良くもなく悪くもない、とても普通の学校へ進学し、大学卒業後は中小企業の面接をいくつか受け、受かったところに来ただけなのだ。
それはまぁ普通の生活を毎日毎日過ごしているわけで、気付けばもう30を越していた。
昨日は遅くまで飲み会をやっていたせいか、体がとても重い。
『月曜日とは何故毎週やってくるのか』
俺はよくそんなことを考えている。永遠に月曜日が来なければ会社に行くことも、働くこともしなくていいのに。......それはつまりニートということだろうか。
さて、そんな無駄なことを考えているうちに今日も出勤の時間が近づいてきた。
朝食をパンでささっと済ませ、スーツに着替える。あぁ、鏡の前でネクタイを整えるのはこれで何回目だろう。最初はとてもよかった表情も今じゃぐったりした疲れ顔。これは歳の問題なのか、気持ちの問題なのか......。
「よし......」
乗らない気持ちを無理やり乗せるべく、軽く気合を入れ、玄関を開けた。
◇◆◇◆
今日はいつもより15分早く家を出れた。15分というのは短いようで、実は案外長かったりする。結局捉え方次第で、ゲームをやっている1時間は早く過ぎてしまうが、勉強をしている時の1時間は長く感じるという、あれだ。
......そう、この車での信号待ちも急いでいれば短く感じるのだろうが、今の俺には心の余裕が、
『信号なんてすぐに変わる』
そう思える余裕がある。
ほら、歩行者信号が点滅し始めた。心の余裕は時間の流れを遅くさせるのかな......
......あれ?
あのおばあちゃん点滅してるのに渡り始めて大丈夫かな? 間に合うのかな?......あぁやっぱり間に合わなかった。
おばあちゃんの現在地は俺の車の前。一歩一歩まるで余生を楽しんでいるかのように、ゆっくりと地に足をつけ歩く。既に信号は青になっているので本当ならすぐにでも走り出したいのだが、これでは仕方がない。
......ちょっと遅くない?
おばあちゃんは「すいませんね」と言っているかのように、穏やかな顔でこちらにお辞儀する。
......信号が! 早く! 早く!......あぁ............。
信号は赤に変わり、2度目の信号待ちの時間がやって来た。
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