朝食にさよならを込めて

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 自分の朝ごはんだけとりあえず作って食べた。姉という生物は暴君だ。朝が苦手でゆっくり起きてくるくせにあたたかいご飯ではない食べれないと言う。自分、おとうと、つまり家臣である僕は逆らえるはずがない。何度だって言う。逆らえるはずがない。姉が起きてから再度ご飯を作るのはいつものことだ。  洗濯機のぴーぴーという電子音も好きでは、ない。  洗濯かごに洗濯物を入れて、ベランダに出た。いい天気だ。朝の七時。ゆらゆら青い空気なんて知らないような顔をして、もちろん僕も知らないような顔をして、今日を始める。 「姉ちゃん、起きてよー」  んー、とドアと向こうから声がした。空っぽの洗濯かごを抱えて僕は廊下を歩く。絶対に起きないことはわかってる。オムレツを焼いてからもう一度来よう。食べ物で釣ってしまえばいいっていう話しなのだ。うん。  ちなみに我が家にはもう一人暴君が、定期的に現れて、いた。 「おっはよー、イッキュー君」  両親からもらった、歩、の一文字であゆむと読む僕の名前を原型を留めないくらいにもじりにもじってひねくり回したようなニックネームを笑顔を浮かべた口の端に乗せて、僕のもう一人の暴君、早起きの暴君はにっこり笑った。 「朝ごはん、まだかな?」  僕の喉が空気を上手に吸えずにひゅうと鳴る。 「……今から作りますんでちょっと待っててください、」 「やりぃ。イッキュー君ってあったかい朝ごはん作ってくれるから本当に最高だと思うよ。まぁいまだに眠ってる二階の暴君のせいだけどね。でも最高なことには変わらないよ」  マシンガントークと朝イチだとは思えないハイテンション。ばっちり決めたメイク、空っぽのマグカップをきらきらの桜色のマニキュアで固めた指先でつまみあげて。 「でもとりあえず、コーヒーちょうだい」 「……うん、宵ねぇ」
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