渡辺由里編

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だけど彼女といっても名ばかり。ほとんど触れてもくれなかった。 電話は私からかけるばかりで、用件が済むとすぐに切られる。付き合い始めてすぐに到来したクリスマスという一大イベントでも私は放置されていた。 「それって彼女じゃないでしょ。勘違いじゃないの?」 友達からは笑われたけど、それでも私には自信があった。 他に女はいない。凌介先輩はそういう人なのだ。放置に耐えられるのは私ぐらいだと。たとえ実態がなくても公認だというだけで誇らしかったのに。 なのに、終わりは呆気なく、わずか三か月でやってきた。 〝もう会わない〟 嫌われ要素はすべて封印した自信があったから納得できず、さすがに彼を問い詰めた。 「どうして? 他に誰かいるんですか」 「いや」 彼が口にしたのは、実にあっさりと無駄を省くような理由だった。 「社会人になるから」 「じゃあすぐに誰かと付き合ったりしない?」 「ああ」 合わないことはもうやめたいと、そういうことなのだ。 彼は嘘をつく人ではない。 時にそれが残酷ではあるけれど、彼の無感情さは私の救いだった。 だから私は受け入れた。 なぜなら、先輩が就職する会社は私の伯父が相談役を務めていたからだ。 先輩、三年後に。 心の中でひそかに再会を誓う。 もう少し付き合えるのが早かったら、私はもっと彼の中に入り込めたのかもしれない。 誰にも感情を持たない先輩は二年後も変わらないはずだ。あの冷たさに耐えられるのは私だけ。最後まで隣で粘ればいつか彼もそれを認め、人生でも隣に選んでもらえる。そう信じていた。 それを簡単に覆す、あの人が現れるまでは。
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