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先輩と出会ったのは大学一年の春、友達に連れられて遊びに行った近隣の超有名大学の学食だった。
私たちが通うお嬢様系女子大はその一流大の男子学生に人気が高くて、付き合っている人が多かった。友達もそう。
友達に彼氏を紹介してもらい三人でお喋りしていると、その彼がふと誰かに気付いて立ち上がった。
「戸川先輩!」
その声に私の友人も顔を上げ、ただごとではない熱心さで私の背後を見つめている。
「今日、練習来ますか?」
「五限終わったらな」
友人の熱い視線、色気のある低い声質、背後から漂うオーラみたいなものにつられ、何気なく振り向いた。
その瞬間、もう他のものは一切見えなくなった。
引き締まった長身の体躯、精悍な顔立ち、冷ややかな目つき。
こんな格好いい人、見たことがない。
全身がぞくぞくした。
これが凌介先輩との出会い。
そして、長い長い恋煩いと混迷の始まりだった。
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