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でも、友達の彼氏に凌介先輩を紹介して欲しいと頼み込んでも、いい顔はされなかった。
「戸川先輩はやめといた方がいいと思う」
「どうして?」
「あの通り、超格好いいでしょ? 女切れしないんだよ」
「今、彼女いるの?」
「もちろん。でもすぐ変わるよ。女遊びはしない人だけど、相手がしつこくなると嫌がるね」
ここまで言われても私は諦めなかった。
理由をこじつけては水泳部の集まりに出入りする。
そうして凌介先輩の横に侍る彼女らしき女子を観察し、傾向を探った。
どうやら派手な女は苦手らしいとわかれば服も趣味のネイルも清楚系で固め、ひたすら先輩の視野に居続ける。
でも確かに聞いた通り、彼女はあまり長続きしない。
先輩が自分から女を好きになることはなく、また付き合っていても好きになったりはしないらしい。そのことに相手が煮詰まってストーカー化すると切ってしまう。
そんな彼女を見て、バカじゃない?と思っていた。
先輩が何を嫌うか、わかってるだろうに。
でも、それは凌介先輩から遠い場所にいるから言えたことだった。
この時の私はまだ彼の中毒性を知らなかった。
相手が変わる度、そのチャンスを掴めなかったことが悔しく、意地でまた待ってしまう。他の男子は霞んでしまって目に入らなかった。
待ち続けること半年以上、ついにそのチャンスがやってきた。
先輩が彼女を振った、そのタイミングを捕まえたのだ。
。
「俺、付き合いらしい付き合いはしないんだけど」
一度は断られ、それでも食い下がると、感情のない承諾が返ってきた。
「別にいいけど」
こんな返事でも天にも昇る気持ちだった。
先輩の隣を歩けることが誇らしくてたまらなかった。
もともと〝女は誰でもいい〟のだ。
嫌われないように気を付けて傍に居ればいい。
そうするうちに、無二の存在になれるはず。
この場所は絶対に誰にも譲らない。
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