櫻の巨木と青年の"シタイ"

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突然の事に驚き、振り返ると……… ─── 先程迄は蕾もまばらだった筈の桜の木が淡い色で覆われていた。 「………うそ。さっきまで咲いてなかったのに…」 事の展開に驚き頭がついていかず、呆然としていると、ヒラリ、ヒラリ。一枚、また一枚と花弁が私の顔に降ってきた。 それはまるで……… ──── 私の青い涙を桜の花弁にかえてくれている気がして、更に涙が溢れた。 すると今度は風もないのに舞い散るたくさんの花弁が私の身体を包みこんだ。 ── 桜の花弁の筈なのに、私の身体を優しく包み込む香りは『彼』のもので… 彼に抱き締められているような錯覚さえした。 『泣かないで』 そう彼が言っている気がした。 暫くその場に滞在していたが、ある事を思い立ち帰路に付く事にして、その前に『彼』を見上げて問いかける。 「………ありがとう、約束を守ってくれて。 辛くなったらまた来ても良い?」 すると、『良いよ』と言ってくれているように、数枚の花弁が私の右頬を優しく撫でてくれたので、その場を後にした。
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