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あれから何度も春を迎えた。
手を繋いで、あの櫻の巨木を訪れた母と幼い少女。
「ねえ、ママ。そのネックレスきれいだね!」
鳥の囀ずりのような声で陽気に話す少女の視線の先には母の胸元で、─── あの青年の"一部"から造成された蒼く輝く人口石が揺れている。
「…これはね?ママのおばあちゃん、………あなたのおばあちゃんのお母さんが、ずっと、ずぅーっと!大切にしていたおじいちゃんの形見なんだよ」
「かたみ?」
「うん、おじいちゃんの物でおばあちゃんの大切な宝物。………今日はおばあちゃんの命日だから特別に付けているのよ」
「たからものー!!」
仲睦まじい親子の様子を頭上で、満開に咲き誇る櫻の花が優しく見下ろしている。
母親はそんな咲き誇る樹を見上げ、心の中で囁く。
──── おじいちゃん、おばあちゃんの為に櫻の樹に"慕意"を捧げ続けてくれて、
ありがとう ─────。
────────── Fin.
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