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「………櫻の木の下にはさ─── 」
まるでコーヒーに砂糖を落とすようにポツリと優しく呟く彼に目をやると、あの大きな木を真っ直ぐに見つめる彼の横顔が、冬独特の曇天の空より射し込む太陽の陽に当てられキラキラと輝いている。
ドキドキしながら彼の横顔に見惚れていると、彼が私を見つめたかと思うと不意に悪戯を企む少年のように笑い、胸がドキリとした。
「…『櫻の木の下には死体が埋まっている。だから櫻は儚く美しい。』って言われてるの知ってる?」
「………知らない。何それ?都市伝説?」
「さあ?解んないけど…そう言われてるみたいだよ」
── 悪戯っこのような顔をしたかと思えば、いきなり真剣な顔をする。
そんな彼の素敵な百面相をずっと眺めていたい。
そう願わずにはいられなかった。
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