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葬儀が済み、初七日もとっくに経ぎ、時間だけが忙しく過ぎ去る。
── 辺りはすっかり暖かい日射しに、たまに冷たいが柔らかな風となり、
透き通る空と青々と茂る大地が春を迎え始めた。
だが、
─── 彼を喪った、私の世界は色を無くし、未だ冷たい冬のままだ。
何もする気になれない。
食事ですら取る気になれず、自室の窓際に座り込みただ、ひたすら彼の一部を撫でながら時を浪費させる。
そんな毎日を過ごしていると、ある日、玄関先で「カタン」と小さな音が聞こえた。
普段なら何かを気にかける事すらしないのに、何故かその時ばかりは身体が自然と動いた。
─── 音の正体はどうやら郵便物のようだ。
一通の白い封筒が郵便受けから見え隠れしている。
封筒を手に取ると、不思議な事に差出人はおろか消印すらなく、宛名として私の名前だけが書いてある。
不信に思いながらも封筒を自室に持って入り封をあけると ─────
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