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そう言うと、その家族はポカンとした顔で、私を見た。
しまった。今の私はのっぺらぼうだった。
「誰って、お母さん。何言ってるの?」
笑いながら若い娘が言う。
「お前、寝ぼけてるのか?」
しらない中年の男が言う。
これは私の家族ではないし、この人たちは、何故こののっぺらぼうの顔を見て何も言わないのだろう。
何かがおかしい。
よく見れば、この家は誰の家なのだ?
これは夢なのか?
家族が出掛けたあと、私は手がかりを得ようと、パソコンを開いてみた。
すると、そこには、いつの間にか小説が投稿されており、それに対してすぐに批判がされてあった。
その名前は私のハンドルネームだった。
こんなことは書いた覚えもないのに。
小説はそこそこ面白いものだった。しばらく夢中になって読んでいた。まるで自分が書いたような気がしていた。それに対して口汚く罵るコメントが書いてある。
「まるで二流小説」
二流で当たり前ではないか。素人なのだから。
一流なら、プロになってるっつうの。
私は、そこで初めてはっとした。
そうか。きっとこんな気持ちで、作者は私のコメントを眺めていたに違いない。
顔の見えない者による心ない批判。
もしかして、私は、それでのっぺらぼうになっちゃったの?
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