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「お疲れちゃ~ん。交代に来たよ~」
一つ上の先輩がやってきて、我に返った。
あまりに暇だと、思考も内側に埋没するんだな。気分転換に、ブルーシートは先輩に任せて少し散歩することにした。
堤防に沿って咲き誇る桜は、まるで川面を覗き込むように大きく枝を伸ばしている。
それが水面に映り込んで一層華やかだ。
春らしい水色の空を背景に、舞い散る花びらは美しいけれど、確かに無常の儚さも漂わせていて、こんなに綺麗な場面がどうしようもなく哀しく感じてしまう。
「乙女か僕は」
と、自分にツッコミを入れてしまった。
でも確かに。
哀しいくらい美しい。だって、
姉さんが逝ってしまった日も、こんな風に桜が美しかったから。
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