満開の桜

9/18
前へ
/22ページ
次へ
「お疲れちゃ~ん。交代に来たよ~」 一つ上の先輩がやってきて、我に返った。 あまりに暇だと、思考も内側に埋没するんだな。気分転換に、ブルーシートは先輩に任せて少し散歩することにした。 堤防に沿って咲き誇る桜は、まるで川面を覗き込むように大きく枝を伸ばしている。 それが水面に映り込んで一層華やかだ。 春らしい水色の空を背景に、舞い散る花びらは美しいけれど、確かに無常の儚さも漂わせていて、こんなに綺麗な場面がどうしようもなく哀しく感じてしまう。 「乙女か僕は」 と、自分にツッコミを入れてしまった。 でも確かに。 哀しいくらい美しい。だって、 姉さんが逝ってしまった日も、こんな風に桜が美しかったから。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加