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夕暮れの帰り道、僕はまた璃桜の手を引いて歩く。
富樫家の前に着いても離れがたく、僕は表門脇の木戸から屋敷内に入り玄関先まで送り届けたところでようやく彼女の手を離した。
「じゃああの……。明日も、来ます……」
向き合えばなんとなく照れくさいけれど、彼女のはんなりと微笑む姿から目を逸らせなくなる。
すると見つめ合った璃桜が突然目を見開き、その唇が戦慄いた。
夕陽の加減のせいか瞳の色が黄金色に見える。
(な、なんだ……?)
それと同時に表門が開き、滑り込んできたリムジンから富樫が顔を出した。
「ああ蒼介先生、今お帰りですか? ちょうど良かった、叔父と食事に行くのでご一緒しませんか。貴方を紹介したいんです」
「は……、いや今日はちょっと」
「どうか是非。叔父も一度貴方に会えば、誠実な方だとわかって安心すると思うんですよ。私の顔を立てると思ってお願いします」
富樫の真摯な声色に、断るタイミングを失ってしまう。
「……では、食事だけでよろしけ……」
その時、背後から聞こえた思いも寄らない声に僕の返事が途切れた。
「──そ……ぅ……、さ……!」
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