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「富樫が妹のカウンセラーを探してるって情報をくれたタレコミ屋が殺られた。目と耳と口、タッカーでホチキス止めされて焼かれてたそうだ。タレコミ屋だと知った上でのやり方だろう。つまりはウチらマル暴、四課特捜部への警告だ。
お前の身が危ない。手を引け!」
「そんな……でも、僕は璃桜をこのままにして行けない!」
僕の押し殺した訴えに、安田刑事は目を吊り上げた。
「なに入れ上げとんじゃボンクラ! いいか、あの女は富樫のイロだ。しかも先代から親子二代に渡ってのな。俺が別場で掴んだ情報だ、間違いない!」
「イロって……情婦……? はは、まさか。先代だって璃桜が十四の時に死んでるんですよ。それじゃあまるで虐待……」
自分で言った言葉に、身体から血の気が引いていくのがわかる。
「十四どころじゃねえ、十一の歳からだそうだ。それとな、先代の車はブレーキに細工と、本人は睡眠薬を飲まされてたって噂がある。ブレーキはともかく、睡眠薬なら女子供でも仕込めるわな。十一のガキが情婦暮らし……酷な話だ」
幻聴のような安田刑事の声に、これまでの璃桜の全てが溢れ出す。
物憂げな横顔、儚げな微笑み、繋いだ手の確かなぬくもり。蒼介と呼んでくれた掠れがちな声。
そして、こちらを見つめて怯えたように揺らした黄金色の瞳。
そこで僕はハッと息を飲んだ。
「璃桜……まさかさっき、僕の死に際が視えたのか? 富樫が気付いていたなら、連れて行かれた僕はきっと……。……璃桜!!」
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