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──滑るように走るリムジンの中、真っ黒な仕切り板が音もなくせり上がった。
「……惚れてたのか? あのガキは四課のデコ助だぞ。タレコミかましたクズ、ちょいと突ついたらあっさり唄いやがった」
クックと喉を鳴らし、陸が覗きこんでくる。
「……興味ないわ。四課の刑事にも、目と口と耳潰されて燃やされた男にも」
後部座席でゆったりと長い脚を組み、璃桜はすっかり陽が落ちた窓の外を眺める。
その璃桜の言葉に、陸の顔から笑みが消えた。
「視えてたのか……そういやあのクズ、ウチに出入りしてた時期もあった。その死神の力は健在だな。……で? 発話障害が治ってる事は言ってないようだが……奴と、寝たか」
璃桜は物憂げに振り返り、静かに陸の瞳を見返した。
「私は富樫 陸の女。陸が父さんから私を解放してくれた時から、私達二人が……死ぬ瞬間まで」
「二人……? 俺達はその瞬間、一緒なのか。もう視えているのか」
「…………」
答えない璃桜の頬を両手で掴み、陸はその唇をきつく塞いだ。
自分で尋ねておきながら、まるで『聞きたくない』とでも言う様に。
「璃桜……。死を予見された親父は、恐怖のあまりお前という死神を狂ったように愛した。服従させたかったんじゃない。俺にはわかる。死神が怖いなら……愛してしまえばいい……!」
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