瑠璃ひとひら

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  生まれつきではなく 『十四歳の時、心因性発話障害と診断』と調書には記載されていた。  十四歳と言えば父親が亡くなった年にも重なる。となると、父親の死を自分が予見していたという思い込みのショックから発症したのかもしれない。  璃桜が小さく頭を横に振る。  その震える手をそっと押さえてやり、僕はペンを抜き取った。 「ごめん……急がせすぎたね。今日はここまでにしようか。ゆっくり、できる事を一緒に探そう」  縋るようにこちらを見上げる瞳に吸い込まれそうになる。  その時、部屋のドアが躊躇なく開かれた。 「やあ蒼介先生、いらっしゃい」  如才ない笑顔で入ってきたのは、亡き父に代わり若くして家督を継いだ富樫家の現当主、陸という男。  璃桜の兄にあたり、妹の為に訪問心療カウンセラーを探していたのも彼だった。   「お邪魔してます。でも今日はそろそろ失礼しようと思っていました」 「もうお帰りですか? でしたら駅までお送りしましょう」  どうぞ、と富樫がドアを開けて僕を促す。  一瞬、身体にピリッと緊張が走ったが、ここで断わっては不自然だろう。 「……お言葉に甘えます。じゃあ璃桜さん、また明日」  ふと惑うように視線を泳がせた後、璃桜はコクンと頷いた。
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